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経営コラム SOLID AS FAITH 第606号
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ご愛読ありがとうございます。第606話をお届けします。
4月に入ってから猛暑になったりまた平年並みに戻ったりと、不安定な気
候が続いています。そして、このコラムが到着する頃にはGWも始まります。
企業にとっての一つの大きなGWのイベントは、GW明けの退職者続出になりつ
つあると報じられています。
慰留のチャンスなど殆どない場合が多いでしょうが、退職者が退職を連絡
してきた時点で、その意思を覆すことは至難の業です。退職者が発生する要
因はさまざまで、ネット上で騒がれるような必ずしもブラックなおかしな職
場が原因ばかりということでもないでしょう。社員の側に大きな問題がある
ケースもあるかと考えられますが、そんな社員を雇ってしまったのも会社で
す。発生した退職者に労力やコストを極力かけず見送り、同じ現象の発生を
防ぐことに専念すべきです。
退職者の発生予防の第一手は、社員の動機づけの要因や構造を正しく把握
することです。その際に、古典的ではありますが、ハーズバーグの二要因説
は今尚非常に有効です。社員は自社において何が嬉しくて働いているのかが
分からなければ、改善のしようもありません。スマホの画面タップ数回で面
接ができて即採用といった時代に、社員がそんな手元の機会さえ省みないよ
うな組織を作り上げることが大切なのです。ハーズバーグの二要因説を中小
零細企業の現場に当てはめて考えた解説ページが弊社のウェブサイトにあり
ますので、ご笑覧ください。従来の自社の誤った動機付けのありかたに気づ
くことになるかもしれません。
今回お届けする606話は『蛍雪の類』と題して巷間で言われるリスキリン
グについて考えてみたものです。最近の流行では、日本よりも激しい学歴格
差社会の欧米に見習って、社会人になってからでも修士・博士のタイトル取
得とされることが多いようです。修士号・博士号にも勿論学びは多々あるで
しょうし、学び方を学ぶという意味でも非常に有意義なのは論を待ちません。
しかし、日本は比較的最近まで『ケイコとマナブ』という雑誌が存在した国
です。職場だけではなく習い事や趣味全般の中にも学びは幾らでもあるのが
私たちの常識です。それらが乏しい他先進国の「学びの学校依存」とでも言
える状況を見習えという主張には疑問が湧きます。
中小零細企業の現場にもある学びの状況、そして、中小零細企業でも現場
で実現できる人間的成長。そうしたことを考えてみました。ご意見・ご感想
をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!
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■弊社ウェブページ 『社員満足と動機付け』
http://msi-group.org/msi-es-facilitation/
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その606:蛍雪の類
羽田空港を歩いていると店舗の間に大きなショーケースがあった。中には
等身大の人物の立ち姿を象ったボード。その脇に大きなプロフィール一覧。
さらに横には10冊以上の書籍を並べた棚と、清掃用具類のディスプレイが設
置されている。赤い作業着を着たその女性の名は新津春子。1970年中国残留
孤児二世として中国瀋陽で生まれた。渡日後に清掃の仕事を始め1995年に空
港の清掃作業を始める。その二年後、当時最年少で全国ビルクリーニング技
能競技会一位に輝いた。著書多数の彼女は「清掃のプロ」と名乗っているら
しい。
ハーバード大学の経営学部の教授と学生が毎年来る日本ツアーで訪れる場
所の中に、東京駅の新幹線車両内部の清掃作業があると何度か聞いたことが
ある。街に溢れるインバウンドの外国人達が総じて驚くのが街や施設の清潔
感。それらは彼女に似た立場の多くの人々の丁寧な仕事によって実現されて
いる。
米国ならマックジョブとでも言われる低時給で仕方なくやる仕事群。多く
の清掃員、多くの配達員、多くの現場作業員などなど。こうした仕事の質の
高さが日本には存在している。米国ではジョブ型雇用の職種は固く学歴に紐
づいていて、学歴の違いで待遇に差別が許されているため、こうした作業に
従事する人々の多くは賃金も動機付けも低い。
昨今「日本ではメンバーシップ型雇用をするから専門性が深まらず、生産
性も賃金も上がらない最大の要因になっている。ジョブ型雇用に切り替えて
専門性を深めるべきだ」などと世迷言を言う向きが増殖した。ジョブ型雇用
の専門家はその仕事を企業が必要としなくなったらすぐに解雇される。専門
家たるもの自己責任で専門スキルを再獲得する「リスキリング」とやらを心
掛けなくてはならない。それは大抵大学に通うことのようだ。
先日読んだ『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方 …』
では、学士では専門性が足らず、修士・博士の保持者が職場に足りない日本
では学びが蔑ろにされていると著者が嘆く。「修士・博士の取得が目的では
ない」と著者は言うが、専門性を磨くオプションは大学教育しか提示されて
いない。米国では大企業の役員・管理職の62%が修士以上の学位を持つが、
日本では6%などと仔細に書かれている。
新津春子は中々替えがきかない。その著書は未読だが、彼女はきっと空港
利用者の様子と日々の現場の汚れを具に観察しているだろう。職場のOJTは
勿論、ビルメン業界団体の研修も受け、各種テキストも読み込んだろう。清
掃用品メーカーの営業担当者の解説からも多くを学んだろう。そんな彼女に
仮に会う機会があったなら、「キャリアアップと専門性を深めるために、ど
この大学で何の専攻を取りたいですか」と尋ねてみたい。
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第607話 『為人の輪郭』 (5月10日発行)
採用面接の際に尋ねてはいけない質問が世に知られるようになりました。
中小零細企業での実践について考えたことまとめてみました。
(完)