『nude』

以前、『細菌列島』を観た新宿の明治通り沿いの映画館で見てきました。秋到来の酷い土砂降りにも関わらず、封切二週目で平日の夜の最終回には、主に男性の観客が私を入れて、10人ほどいました。

このブログに書く、東京の映画館で見る作品としては二本連続で、AV女優の話です。前回は動く鳥肌実を見るため、今回は『リアル鬼ごっこ2』で気になった(そして、あとから、実は『リアル鬼ごっこ』にも全く別の端役で出ていた筈と気付いた)渡辺奈緒子の新作を見たくて、心待ちにしていたのがとうとう叶った、と言う偶然の結果です。

前に見た『名前のない女たち』の主人公は企画女優で、正に使い捨て感があり、「私たちも人間なんだよ!」と感情が噴き出す場面もあるほどですが、今回の主人公は、マネージャー付き、タクシー送迎付きの単体女優様です。原作は、私がこの映画をきっかけに初めて知ったAV女優みひろによるもので、一応自伝小説と言うことらしいですが、少なくとも映画で見る限り、かなりフィクション感があります。

特に、今時の20代前半にしては、随分幼稚なキャラばかり出てくるのにはかなり唖然とさせられます。みひろが新潟から一緒に上京した交際相手は、いきなり無職になってみひろのヒモ状態になるくせに、自分の食いぶちを生みだしているみひろの生業を「ハダカの仕事」と見下してきれいごとを言い続け、終いには、嫌がるみひろに中出しセックスまで強要します。新潟に残って親の脛を齧って大学生をしている(と思われる)みひろの高校時代の親友も、みひろがグラビアアイドルになった時点で、みひろの状況を恥ずかしいもの、あってはならないもの、多分騙されてしていること、ぐらいに認識して、独り勝手に憤慨しています。

みひろ自身が演じる先輩AV女優に「プロとして振る舞え」と叱咤されたみひろは、AV女優の道を選ぶとだめんずの交際相手に引導を渡し、親友からの絶交の知らせにも動揺を抑えて仕事に向かいます。つまるところ、「ガキの言い分を聞いていたら仕事にならん」と言うことでしょう。拍手喝采です。

『名前のない女たち』のパンフによれば、AV市場は、年間2万タイトル発表され、女優は年間のべ1万人です。ニッチな熟女ものや非合法寸前のペドもの(ロリもの)を除いて、特定の年齢層に女優たちの年齢は偏っている筈ですから、その年齢層にはかなりの確率でAV女優経験者が含まれている筈です。新潟は余程の田舎であるという想定なのか、映画に登場する新潟県人のナイーブさはかなりのものです。あららと思ってみていたら、パンフのみひろのインタビューでは、実際の彼女の親や親友はさばさばしていて、全然問題なく彼女の仕事やその成果を語って聞かせられるとのことで、随分な脚色だと思いました。

渡辺奈緒子は、予想通りのそこそこレベルの存在感です。『紀子の食卓』でも際立っていた目ヂカラは、さらに磨きがかかっているように見えます。ただ、まるで映画の中のみひろよろしく、最近、映画紹介の登場人物欄に登場さえしないような役で、『シルク』、『アウトレイジ』とヌードやら濡れ場を披露してきて、さらに今回はAV女優役です。チラシやポスターには、この手の状況になると必ず出てくる表現「体当たりの演技」が炸裂しています。体当たりの演技よりも、もっとほかの何かを磨いた方が良いことを、今回の自分が初主演したストーリーから学んでいただけたらなあとは、一ライト・ファンとしては思わざるを得ません。

一方、一人輝く名演技の女優を見つけました。冒頭から(私にはどれぐらいリアルなのか分かりませんが)、不自然さなく新潟弁を使いこなし、卒業式では大泣きし、みひろのAVを自宅で見つめては憤慨してスナック菓子を馬鹿食いしながら涙するみひろの親友役です。どこかで見たなと思ったら、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で、私がアイドルとしては大ファンの、愛すべき大根役者サトエリを食ってしまうぐらいの迫真の演技だった妹役の女優でした。パンフによればブルーリボン賞のノミネートを連発しています。むべなるかなでしょうか。

この映画のストーリーが事実に基づいたものなら、面白くは感じたと思うのですが、先述のようなフィクション性が、少々鼻につくので、DVDは要りません。

みひろのFANZA動画