590 稼業と家業

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経営コラム SOLID AS FAITH 第590号
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 ご愛読ありがとうございます。第590話をお届けします。

 通称武漢ウイルス禍がまた世間に広がる一方で、東北地方を直撃した台風
など各地で天候被害も多々発生し、さらに度重なる地震から南海トラフ地震
の発生確率が上がったと報じられる激動の夏休みが過ぎました。良いニュー
スはパリ五輪の日本勢の活躍が一際目立ったことでしたが、病禍、台風、地
震と中小零細企業にとって経営を揺るがすような事柄が、簡単にリスクとな
って立ち現れることが痛感される盛夏だったように感じます。

 総じて見ると、世界経済は未だにグローバル化の反転の流れが続いており、
一般に国内の中小零細企業にとっては追い風になりやすい状況です。円安も
一服し色々な好条件が日常の経営の中で提示されることも出てきていること
でしょう。一見何でもないように見える好機を逃すことなく事業の飛躍に結
びつけつつ、発生するリスクに耐えられるような基礎体力の充実も推し進め
るべき時であるように思えます。
 
 今号は『稼業と家業』と題して、経営者夫婦の関係性について考えてみる
内容です。創刊以来扱ったことのなかったテーマであると記憶します。しか
し、経営者夫婦の経営に関する考え方のブレや、後継者育成に対する考え方
の不一致は、中小零細企業の事業を根幹から揺さぶる大きな問題です。しか
し、それはあまりにベーシックなテーマ過ぎて、例えば中小企業庁の掲げる
中小企業支援策などでもあからさまに取り上げられることがありません。過
去の号のジェンダー論などにも触れつつ、比較的最近クライアントの経営者
夫婦と話した内容を再編してまとめてみた内容です。ご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その590:稼業と家業

「えと。『こうした中で、現行の法律婚を「チェックリスト方式」に分解し
た方がいい、という提案も出ている。結婚した場合、法律で定められている
様々な義務(夫婦同姓、同居・扶助義務、婚姻費用分担義務、日常家事債務
の連帯責任、貞操義務、未成年の子の監護義務)と権利(財産分与請求権、
相続権)をすべて自動的に負うことになる。そこに選択の余地はない。しか
し、これらの義務を全て選択可能なチェックリスト方式にして、婚姻届を提
出する際、パートナーとの話し合いの元に、自分たちが望む義務と権利だけ
を選べるようにする』というような結婚のありようを検討した方が良いかも
しれませんね」。
 私はスマホを操作しながら、第473話『約束の融解』の冒頭を読上げた。
この文章を読み上げて結婚生活の見直しを促すことが最近何回かある。

「ですから。いいですか。『私たちの文明が成立したのは、概ね紀元前5000
年前ぐらいです。つまり、私たち人類の歴史をクロマニヨン人の時代から計
算すると、文明が存在しているのは歴史のラスト3.5%に過ぎません。私たち
の体の構造が決まってから、文明生活をしている期間を計算すると、0.35%
にしかならないのです。仮に人類の歴史を1年と計算すると、前者は二週間
にも満たない時間です。そして、後者は大晦日1日ちょっとの時間でしかあ
りません。ほとんど丸一年を通じてカラダとしては最適化された生活をして
いたのに、最後の一日で、突如として違うことをやろうとしても、無理が生
じるのは当たり前と誰もが気付くことでしょう。』と書いたんです。だから、
ジェンダー・ロールだってデフォルトが遺伝子レベルで決まっているんです。
男は女の奴隷で競争ばっかの狩猟者。生物としての主役の女は「採集者」で
仲間と協力して暮らし、妊娠して次世代を作る役割です。これを意図的に変
えるのは自由ですが、それなりに不都合が起き得るということです。」
 これは21周年記念特別号。これもスマホの画面を読み聞かせることが時々
ある。

 零細企業はオーナー家の人々が役員陣を固めることが多い。夫が社長で妻
が「ヒラ取」で、事務系の仕事を担当していることがよくある。住居と職場
が一緒のこともよくある。

「社長が頭が古くて、ジェンダー・ロールに縛られて、私に色々口出しさせ
ないようにする」と怒る妻。「妻が経営のことなんか何も分かっていないの
に株を貰って社長になったから、自分は尻ぬぐいばかりさせられる」と憤る
婿。妻に面従腹背の夫。事業を虚栄の道具にしか見ていない妻。業務か家事
かの何かをきっかけに不仲になり、コミュニケーションが断絶する。それを
見聞きしていないふりをする子供達。

 零細企業の生産性改善や後継者育成などに対しての公的支援制度は手厚い。
しかし、オカミの与り知らぬ夫婦不和は多くの零細企業の本質的で主要な経
営課題かもしれない。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか…』 
 紺野大地・池谷裕二 共著
■『世界インフレと戦争…』 中野剛志 著
■『ポリコレ過剰社会』 小浜逸郎 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第591話 『ハズレ籤』 (9月10日発行)
 ネットが自分の好みに合わせた情報を次々と用意してくれるようになりま
した。その分、人々の「ハズレ」た選択肢に対する許容度合いは減っている
ように感じます。商品に対する選択も入社する会社の選択もその例外ではあ
りません。そうした人々の選好について考えてみました。

(完)