589 リスクの神様

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経営コラム SOLID AS FAITH 第589号
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 ご愛読ありがとうございます。第589話をお届けします。

 8月に入りました。多くの地域では例年を大きく超える気温の中での営業
に色々な支障が発生していることもあるようです。8月は真ん中に10日弱の
休日を設けている企業も多いことかと存じます。本日10日の時点ですでにそ
の休日に入っている企業もあることでしょう。人口移動が激しくなれば、爆
発的に感染者数が増えている通称武漢ウイルス禍も全国に広がることでしょ
う。暑さによって体力が奪われがちな状態で感染の拡大は尚更です。休み明
けには恙なく営業を再開できるよう通称武漢ウイルスの感染対策をお心掛け
下さい。

 前回までは2回シリーズ『危うい認知』をお届けしました。工場見学・工
場案内の場を基にして、情報の受け手の認識を確立することの難しさを考え
てみた内容です。当たり前のことですが、このようなことは工場見学・工場
案内のみならず、コミュニケーション全般において把握しておかねばならな
いことです。しかし、実際には、情報の発信側の「言っただけ」や、「書い
て渡しただけ」は、非常に多く企業の中に見つかります。取り分け、相手の
理解を完成するために欠落している情報に考え至る力はなかなか身に付くも
のではありません。古典的なホウレンソウの心掛けは、今尚価値を落として
いません。そのような背景を踏まえつつ、前号までの『危うい認知』2作を
読み返していただければ、新たな発見があるかと思います。
 
 今回はVUCAの時代に既存事業が孕むリスクの増大を採り上げてみました。
新規事業の立上げと比べる時、既存事業は相対的にリスクが極少と評価され
ることが多いですが、そのような単純な構図では片付けられない場面が増え
ているように考えられます。そんなちょっとした常識の塗り替えについて考
えてみた内容です。タイトルの『リスクの神様』は2015年に放映されたビジ
ネス・ドラマのタイトルで、中堅企業経営の多様なリスクを採り上げる非常
に学びの大きいものでした。今号の内容は特にドラマの内容とは関係があり
ません。単にドラマへのリスペクトからそのようなタイトルにしてみたもの
とご理解ください。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その589:リスクの神様

「ご存じの通りウチの会長は結構老害が入っていて、騙されて投資をして
1000万円も特損を出したり酷いもんで。その会長が大手の役員を引退した人
を顧問を入れると言ってきて。会ってみたら常識人で安心したんですよ。た
だ色々話しているうちに、ウチの新規事業の取り組みを中止すべきだと言わ
れてしまって。放漫経営で会社がズタボロの時にリスクの高い新規事業など
やる余裕がないから本業に回帰しろって。市川さんどう思いますか」。
 以前から付き合いのある中堅企業のオーナーの娘婿に久々に会ったら、早
速経営相談が始まった。私は以前彼の依頼でこの会社の営業担当者の商談改
善プロジェクトを企画運営したことがある。特に採用方針もなく中途採用さ
れた営業担当者のスキルはバラバラで、標準的な営業プロセスもトークもな
い。その営業活動の標準化を狙って月一開催をした。
 
 しかし、当時から既に高齢だった会長が、「営業マンが社内に籠っていて
も稼ぎにならない。何でもいいから外に行け」と激昂し、プロジェクトは道
半ばで中止になり、それから数ヶ月後、娘婿も会社を去った。それから5年。
会社はさらに傾き、以前の幹部は次々と退職し、会社を支える者が居なくな
って彼が復帰することになったらしい。
 
 新規事業はリスクが高い。何十年とやってきた本業さえ満足にできないの
に、未知の商材に手を出してまともに売れる訳がない。そういった意見はこ
の会社のみならず耳にする。そして、それには一理ある。しかし、時代はか
なり変わった。
 
 VUCAの時代。分からないことや読めないこと、さらにアテにならないこと
がやたらに増えて、大手企業だって10年計画など作成を躊躇するようになっ
た。何十年とやって来た商売でも、顧客企業も入れ替わり、以前からの大口
でさえ役員が交代し方針が変わり、スマホを通じてネットが手元に収まって
ビジネスモデルまで変わっているだろう。競合も異業種から参入するどころ
か、市場そのものがイノベーションで別のものに取って代わられることさえ
起り得る。既存事業は本当によく理解されていて低リスクなのか。

「既存のビジネスについて営業担当者に簡単な筆記試験をして、その結果を
新任顧問に見せて差し上げたらいいんじゃないですか。顧客ごとのよく売れ
る自社商品。顧客ごとの自社商品のベネフィットとか。以前のプロジェクト
当時よりもさらに営業活動の質は下がってるなら、こんな答えもみんな書け
ないですよね。そこで、『既存事業だって新規事業と同じぐらいリスクはあ
るんです』、『ウチの会社にはリスクの神様があちこちにいます。何をして
もリスクだらけなので、逆に言えば、何を改善しても儲かります』と伝える
とか」。

 呆れ顔の彼に言い放った私の頭の中に広瀬香美の歌が流れ始めた。笑い事
ではないが。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『日本語が消滅する』 山口仲美 著
■『人生を変えるセックス 愛と性の相談室』 代々木忠 著
■『放っておく力』 枡野俊明 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第590話 『稼業と家業』 (8月25日発行)
 社長夫婦が経営の全権を握っている中小零細企業は多数あります。中小零
細企業の経営を左右する主要な要因としての夫婦間の人間関係について考え
てみます。

(完)