239 事件の背後

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経営コラム SOLID AS FAITH 第239号
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新年明けましておめでとうございます。第239話をお届けします。
本年も当コラムをご愛読賜りますようお願い申し上げます。

 今回の年末年始は休みが少なく、慌しかったと伺います。私はまた十話を切
ってしまっていた完成原稿の在庫にふと気付き、数日に渡って、少しずつネタ
帳から原稿を作成しておりました。久々のシリーズもので、4話連続のテーマ
ができて満足しています。

 この号が読者の方々に配信される頃、一部の方々のお手許には弊社からの寒
中見舞いが届いているものと思います。恒例のA4サイズの大判葉書ですが、
昨年のソリアズ10周年記念特別号前後編に続く、番外編として、ソリアズ10
周年の歩みをまとめた年表がハガキの裏面に載っています。ご希望の方は、P
R欄の案内に従ってご連絡下さい。

 さて、239話は携帯小説の話をモチーフとしてみました。第209話『官能作
家の憂鬱』に登場する作家が、行きつけの飲み屋で会うごとに、「携帯小説な
んか、小説じゃない。あんなものは読めたもんじゃない」などと愚痴っている
のを小耳に挟みます。自分では読んだことがありませんでしたが、先日『ケー
タイ小説的。 “再ヤンキー化”時代の少女たち』と言う面白い本を読んで、
その実態を知りました。さらに本文に出ている宮台真司の著作が組み合わさっ
て、今回の号ができました。お楽しみ戴けましたら幸いです。本文に対するご
意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納
期は5営業日!!
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その239:事件の背後

「13歳の時に、サッカーボールをぶつけてきた少年に一目ぼれして、好きだと
言ったら、やらせろと言われ、初体験をし、散々遊ばれて、その後、相手が歌
舞伎町に行ったので、追って行った歌舞伎町でウリもバンバンするホステスに
なって、金持ちバーサン相手のホストになった相手と巡り合うものの、初めて
相思相愛の状態でキスした翌日、追ってきたヤクザに相手が殺されてしまい、
妊娠して残されたかわいい子の物語」。

 東京で観た映画の感想を書きまとめたブログに、『十年愛』のあらすじを書
き込んで、「やっぱ感動だよねぇ」と口々に言いつつ劇場を後にした若い女性
の一団を思い出した。僅か75分の映画で、主人公のセックスシーンのやたらの
多さに驚き、次々と起こるイベントの詰め込みに眩暈さえしそうになって、ハ
ヤリの携帯小説の感動の作法に思いを巡らす。恐る恐るDVDをレンタルして
見た『ケータイ小説家の愛』でも、携帯小説を書くための体験として、女子高
生がレイプされたり薬をやったり、恋人が自殺したりと、目まぐるしい。

 著書『日本の難点』の中で、携帯小説『恋空』の、輪姦され、セックスして、
妊娠して、流産してと、繁忙極めるストーリーを取り上げ、社会学者宮台真司
は、「関係の履歴」ではなく「事件の羅列」であると指摘する。あれこれあっ
て今があるという関係の履歴によって、人間同士の関係は濃密で入れ替え不能
なものになり、相手に対するコミットメントが成立するという。そして「事件
の羅列」形式のストーリーは、濃密な人間関係の体験がない読者を想定してい
るものだと説明する。
 
 新卒社員の育成方法をまとめた『人材育成のレポート』が、幾つかのクライ
アント企業の現場で育成を担当する者に配布されている。幹部達は、レポート
の内容を読み聞かせ、説明し、テスト問題を作り、作文を書かせ、コストの塊
となって入社してくる新入社員を預かる育成担当者を春までに育成する。自分
が教えるようになって様々な疑問が湧く。私も復習しなくてはならないような
質問が幹部達から寄せられる。当初、読み返せば思い出す答えが多かったが、
ここ数年質問の内容が変質してきた。

「レポートの中の理論や理屈は、説明しなくても独学で分かる担当者が増えて
きたんですよ。理解力が高まって良かったと思っていたら、そうでもないんで
す。逆に市川さんの体験談が書かれていて、その職場の場面や仕事の状況が書
かれているところが問題になってきたんですよ。市川さんと上司の会話とか、
市川さんと部下の会話から、何が起きているかを読み取ることが全然できない
者が増えて来たので、最近はその辺の部分の説明ばかりしていますね」と、今
日お邪魔した企業でもまた、幹部が言い出す。

 事件の羅列から、人は行動を変えるほどに学ぶことができるのだろうか。そ
の可否の仮説を、「やっぱ、感動だよねぇ」の声を反芻しながら作らねばなら
なくなっている。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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★文中で紹介の映画『十年愛』の感想の全文はこちらのページで。
 http://tales.msi-group.org/?p=301
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【MSIグループからのPR】

2010年年初の弊社寒中見舞いは、
経営コラム SOLID AS FAITH 10周年記念特別号 番外編。

ソリアズ10年間の歩みをまとめた ややオタク的ネタ満載の年表です。
「そうだ、そうだ、そういう号あったよな」と、
ソリアズご愛読者の方なら、つい頷いてしまう内容です。

弊社からの寒中見舞いがお届けされていないご愛読者の方は、
是非、弊社にご連絡の上、お手許に年表をお持ち下さい。
今後のソリアズご愛読の上でも楽しみ倍増のアイテムです。

ご連絡方法は、以下のメールアドレスに、
 ●郵便番号
 ●住所
 ●法人名・所属名・役職名(法人の場合)
 ●ご氏名
を本文部分に列記し、タイトルに「寒中見舞い希望」と
お書きのメールをご送信下さい。
折り返しご連絡確認のメールを返信の上、寒中見舞いを発送致します。
 bizcom@msi-group.org

お申し込み期限:1月20日(水)
※ご連絡の情報は厳重に管理し、弊社外に出すことは一切致しません。

ソリアズ10周年記念特別号は以下のページでお読み戴けます。
前編(2009年10月末日発行)
 http://tales.msi-group.org/?p=358
後編(2009年11月末日発行)
 http://tales.msi-group.org/?p=362

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
 発行しています。
 (http://www.mag2.com/ ) 
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け11年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
 第240話 『不本意な取柄』 (1月25日発行) 
 最近流行のワークライフバランスについて、中小零細企業のオーナー経営者
と会話した内容をベースにまとめたものです。ご期待下さい。

(完)