以前、『十年愛』を観た池袋の映画館のレイトショーで見てきました。
セルのビデオ屋さんで、面出しで陳列されている、『援助交際撲滅運動地獄変』が気になってはいたものの、レンタルはされていず、買ってみるほどの勇気もなく、そんな状態が続いていた中で、この映画を『ぴあ』で見つけたのが、鑑賞の主たる動機です。
映画に行って、初めて、この映画が…
●シリーズ三作目であること…
●どの作品も遠藤憲一が主役(?)を勤めていること…
●結果的に四年に一度の周期で、最新話が発表されていること…
●海外でも公開されるなど、カルト的人気を博していること…
などを知りました。(セル)ビデオ店で見た『援助交際撲滅運動地獄変』のパッケージには確かにシリーズ二作目であることが謳われていましたが、面だしされているにも関わらず(セル)ビデオ店で、一作目が販売されているのをついぞ見たことがありません。
援助交際撲滅運動と称して、援助交際をしている女子高生を罠にはめては陵辱・暴行し、「メスブタ」と焼印を押すクニと言う男と、それに対する女性の物語と言うのが、シリーズを通しての共通項のようです。このクニと言う男は、都市伝説と化していて、「エンボクのクニ」と噂されているのですが、この「エンボクのクニ」に妹が襲われ、妹はショックで自殺してしまったとされる主人公の女性フリーランスライターが、シリーズ三作目の主人公です。
で、主人公は、ぶちきれて、逆に「エンボク撲滅運動」を展開し、今度は援助交際に誘う男の方を罠にかけ、リンチに及びます。彼女の仲間となる女子高校生のうち一人が、エンボクのクニの被害者となるのですが、その彼女による顔の確認を最初からすれば、別に関係ない買春者を血祭りに上げることなく済むはずなのですが、遠藤憲一演じるエンボクのクニに辿り着くまでに、かなりの数の買春者が不当な犠牲になっています。
完全なやりすぎ感が展開する中で、エンボクのクニは一枚上手で主人公を罠に逆にはめ、さらにストーリーのツイストが来た中で、もう、悪乗りとも言えるぐらいの驚きのラストシーンで、ぶつりと映画は終了します。
一応、笑うべき映画なのだと思います。「笑っていい映画なんですよ」と最初から言われて見ていたら、スプラッタ感が少々混じっていても、全然気にしないで笑って観られます。そういうことや前評判を知らずに観ると、ホラーなのか、スプラッタなのか、社会批判ドキュメンタリー風なのか、サスペンスなのか、微妙に分らないままに映画の前三分の一ぐらいが進んでしまうので、ちょっと勿体無い気がします。
ポスターではかなりカッコいい、フリーライターのおねぇさんも、(元AV女優とのことですが)さすがグラビア系だけあって、微妙にきれいに見えませんから、後半、縄で拘束されてレイプされるなど体当たりの演技は分りますが、イマイチ感が否めません。
三分の一ぐらいから、これは文句なく楽しめるというものがバーンと提示されます。それは遠藤憲一の怪演です。パンフレットを読むと、彼のアドリブがこの映画の名場面を幾つも構成していることが分ります。ヤクザ映画やら、『あずみ』などでは癖があっても、それなりに悪い役やら、浪花節の役を務める名バイプレイヤーに見えていますが、この映画では、やりたい放題です。楽しめます。映画の鑑賞方法としては、或る面、邪道かもしれませんが、パンフを読んでから観ると、より楽しくなる映画だと思いました。
比較的最近、真昼間のバラエティ番組(トーク番組?)に出演していた遠藤憲一をチャンネルを変える途上で見かけました。家事が全くできなく、所謂「役者バカ」状態で、さらに役どころのイメージとは大きく異なり、火薬の爆発音でも飛び上がるほどびっくりし、高所恐怖症でと、超軟弱風の現実の彼を語っていました。
そんな前情報もあったからでしょうが、ラストシーンで半裸でバイブレーター多数を胴に巻き登場する彼を見て、「きっと、凄く楽しいんだろうなぁ」と思わずにはいられませんでした。ストーリー的には、もうちょっと現実感をますか、もうちょっと変質者の不気味さを出すか、もうちょっとスピード感をますかのどれかにしてもらえたら、もっと好きになれたとは思います。
もう一つ難をいうと、海外での公開を意図しているからでしょうが、英語字幕がついています。タイトルも、「援助交際撲滅運動」の訳として、「Stop The Bitch Campaign」とされています。援助交際をしなくても、ビッチはビッチですので、どうもこの訳が好きになれません。字幕でSTBCと略されてまで登場するごとに、どうも違和感が湧きます。
しかし、この遠藤憲一の怪演は、やはり、DVDとして、この映画を持っておきたくさせるに十分な魅力があります。