571 洞窟のインフルエンザ

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経営コラム SOLID AS FAITH 第571号
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 ご愛読ありがとうございます。第571話をお届けします。

 11月に入りました。先月末日には無事24周年記念特別号を配信することが
できました。今回は中小零細企業の離職抑制策を取り上げてみました。価値
観の多様化やスマホの普及浸透など、人材側の近年の変化も離職が増加して
いる要因ですが、一方で中小零細企業側が自社の規模感や経営観に合わない
離職抑制策を多々採用していることも、離職が増加する要因であるという仮
説の下にまとめてみました。

 離職抑制どころか採用ができないという声もよく聞きますが、多くの採用
できない中小零細企業は離職者が多発するので採用の必要性が恒常的に発生
しています。その状況で採用に成功しても、穴の開いたバケツ状態で離職者
が出続けるので、結局採用コストだけがどんどん積みあがってしまいます。
従業員が定着するようになれば、緊急な採用の頻度が下がり、多少なりとも
質の高い従業員の余裕を持った採用の可能性が広がります。また周年記念特
別号でも書いた通り、ダイレクト・リクルーティングの道も少しつずつです
が開けてくることもあるでしょう。

 中小零細企業の現場・現実を踏まえた離職抑制策があなたの参考となり、
何か実践上の糧になるものであることを祈念致します。

 今号は『洞窟のインフルエンザ』と題して、社内不倫の話を取り上げてみ
ました。過去に当コラムで例のないテーマではないかと思います。過去には
大手企業を中心に新卒採用された一般職女性社員は社内の男性社員と結婚し
て寿退職するのが当たり前と思われていた時代がありました。そういった風
潮を今でも維持しているような企業はもう殆どないことと思いますが、交際
相手と知り合う場として「勤務先」や、知り合うきっかけとして「仕事関係
の接触」が多いのは現在でも変わりません。その交際が所謂不倫であること
もあるでしょう。

 企業組織は顧客満足を通して営利を追求するためのものであって、その目
的に関係のないことは本来経営として管理するべき対象ではありません。営
利追及を害する状態になった場合にのみ、それが不倫であれ何であれ、組織
として対処することになるべきであろうと思われます。そんな事例について
考えてみた内容です。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感
想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その571:洞窟のインフルエンザ

 社長が折り入って相談したいことがあると常務がメールをくれたので、先
方の会議室に向かった。常務と社長は今や遅しと会議室で待っていた。或る
部署の妻帯者の係長と部下の独身女性が交際しているという。社内では二人
の勤務態度は頗る模範的だが、彼らの関係は100人弱の全社にほぼ知れ渡っ
ているらしい。会社の業務には全く支障がないが、女性の方の50代前半の母
親が会社に乗り込んできて、不倫の土壌の会社は責任を取れと執拗に迫って
困るのだという。彼ら二人の関係は業務上全く問題がない。強いて言うなら、
親が乗り込んで来たことそのものが業務に支障を発生させている。

「二人を呼んで、『業務に支障を来すような問題は、自分達できちんと収め
て、今後も今まで以上に仕事に努めるように』と指導するのはどうでしょう。
上手くやれなかったのが問題なのであって、不倫そのものを会社がいちいち
取り締まっていたら、『課長 島耕作』シリーズは成立しないのではないで
すか。指導責任はあるのでしょうから指導はすると」。
 私が困り顔で応えると、社長は「漸く納得できる助言をする人に会えた」
と嘆息した。

 人間が人間らしくなってから数百万年経った。その期間の殆どの間は、洞
窟の中で集団生活をしていて、遺伝子もその生活を前提に適正化されている。
そこに一夫一妻制などなく、実質的な乱交状態が基本であったと言われる。
乱交していても性交に耽っている暇もなく、多分皆夫々の仕事に精を出さね
ば生存は怪しかったろう。不倫など存在しない。

 会社は誰のためにあるかという命題はよく議論される。会社のミッション
はお客様を満足させて利益を獲得し組織として存続することであって、その
ミッションに沿う社員には組織内で満足してもらっていい。しかし、社員の
満足はお客様の満足に優先しない。

「転職してからホントに驚くことばかりですよ。社内で一切プライベートの
会話が禁止されているんです。性別も関係ありません。男同士だろうと『先
週末は何してたの』とかは論外で、『趣味って何かやってるの』とかも完全
にアウトなんです」。
 某有名IT企業に管理職として転職したばかりの知人と会って、社内規定の
異常な厳しさの話ばかり聞かされた。まるでブラック校則のようだと二人で
笑った。学年やクラス単位で使うトイレまで分けて、無用な学生間の接触を
避ける学校まであるという。

 坂爪真吾は不倫は誰にも他人事ではないという。インフルエンザのような
ものと認識すべきだと。防ぐ心掛けは一応できるが、なる時には誰もがなり、
なればそれを日常生活の優先事項にせねばならない。周囲にも迷惑をかける
可能性は高く、後遺症も有りうる。そんな病禍が蔓延した洞窟生活に私達の
遺伝子は最適化されている。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『メタル脳』 中野信子 著
■『名画の中で働く人々 「仕事」で学ぶ西洋史』 中野京子 著
■『日本的「勤勉」のワナ …』 柴田昌治 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
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次号予告:
 第572話 『新型麻薬汚染』 (11月25日発行)
 マズローが有名な五段階欲求説で最上位に置いた自己実現欲求。その本来
の意味とは異なる自己実現を求める人が増えているようなので、文章にまと
めてみました。

(完)