『ディー・ウォーズ』

もうすぐ閉館のコマ劇場の近くの映画館で見てきました。

監督などの制作陣は韓国人の映画で、物語の舞台は一応ロスなのですが、因縁は500年前の韓国にまで遡ります。正義の大蛇と悪の大蛇がいて、500年に一度、ナンチャラと言うパワーの源を持って生まれる女の子がいて、その子が20歳になって、いずれかの大蛇がその子を取り込むと、竜になって世界を支配するほどの力を得る…、と言うような設定(=韓国の言い伝え…と言うことらしいです)です。

端的に感想を言うと、「ストレート・フォワードな特撮映画」です。

悪の大蛇が率いる悪の軍団のようなのがいるのですが、そのクリーチャー達の造形もよくできていますし、動きなども結構リアルで、巨大な蛇がくねりながら猛スピードで住宅地の道路を進み、問題の女の子が乗っている車を追うシーンなども、よくできています。

しかし、ストーリーのほうは、全くひねりがありません。最初に紹介される設定から予想される範囲の中で、どんどん特撮スペクタクルとして進みます。悪の軍団の方は、500年前に韓国の村を襲っているシーンがまず出てくるのですが、同じ軍団がロスで米軍とぶつかる訳です。無敵と称されているはずですが、みていると、米軍は結構善戦しています。長期戦に引っ張れば、結構勝てそうな雰囲気です。やっぱ、人間の軍の方は、500年の間に、かなり進歩していたと言う事なのでしょう。次の500年後なら、簡単に放逐されてしまいそうな感じでした。
※この映画の続編が500年後の戦いだったら面白いかもしれません。意外にターミネーターに乗り入れして、スカイネット軍と戦う悪の大蛇軍団になっていたりしたら、多分悪の大蛇軍は数時間持たずに壊滅してしまいそうです。

謎解きもなければ、破壊され逃げ惑う人々の苦悩のようなものもありません。ロスがあれだけもめているのに、国単位でも国連単位でも何の描写もありません。さらに不思議なのは、この手の映画にお約束的な伏線らしきものが存在するのに、何の役にも立っていないのです。

例えば、ヒロインを病院に運ぶ救急車が道路わきの泥水を撥ね、ホームレスらしき男がびっちゃりと水をかぶって怒っているシーンがあります。それなりの秒数が投じられていますが、この男は二度と登場していないように思います。何の意味もないシーンだったのです。

あと、最初に謎の地盤沈下のような事件が起きるのですが、その脇で「奴らが来た、もう世界はおしまいだ」のようなことを叫んで排除されている男がいます。これもこの手のSFで結構お約束的に出てきて、後で謎解きに貢献したりする筈なのですが、私の記憶では、二度と登場しません。何でロスの街の真ん中に、500年の歳月を経て韓国の大蛇がよみがえることを言い当てられる人間がいるのかと考えれば、普通、何かストーリーのカギを握っていそうなもんですが、何らの貢献もなかったような気がします。他にもいくつかこの手の、役に立っていないお約束シーンに見受けられるものが存在します。何かのオマージュでもないようなので、多分、脚本家が、こう言うときにはこう言うものを入れるべきだという、暗黙の経験則で入れたシーンとしか思えないのです。

怪獣映画はこうあらねばいけない!と何かの強い確信を持った人々が作った映画にしか思えないのですが、私には前評判や雑誌の広告に見るほど凄い映画には見えませんでした。(現実に封切後第一週なのに、かなり空いていましたし。)DVDは買いません。