『デトロイト・メタル・シティ』

最近嬉しいことに、チョコチョコと見たい映画をやってくれる好きな映画館バルト9で、夜中の12時過ぎの回を見てきました。封切から一週間経っていませんでしたが、深夜の回だけあって、多分全部で30人ほどの観客だったように思います。コミックは読んでいませんが、人づてにコミックの話を聞いたり、映画封切が近くなるに連れてあちこちの映画館で見たトレーラーで、まあまあストーリーは把握している状態で見ました。

一応、ヘビメタ好きと言うことになっているので、まあ、それ系の映画は見てみるかなと言う程度の理由です。KISSは、彼らの言葉による「マスクを取った」頃から好きになり、数枚のアルバムは歌詞を丸暗記している状態で、聖飢魔IIも『ワースト』と何枚かのアルバムを持っていますし。ただ、デスメタル系のあのぶっとい声で何を言っているのか分からないジャンルは全然駄目で、劇中のDMCはギリギリの線です。
※高校時代の、ランナウェイズ、スージー・クワトロ、ホワイトスネイク、クイーンに始まり、ディープ・パープル、レインボー、スコーピオンズとどんどん広がって行き、ディオやらデフ・レパードやらVOWWOWやらアンヴィルやらヘッドピンズやら、色々好きです。最近ではメタリカとかトミー・ヘブンリーとか…。こうして見ると、これはヘビメタ好きではないようなのですが、どうもピタッと来るジャンル名がなくて困っています。

主人公の青年がどこから出したかよく分からない衣装をつけ、顔と手を塗り…ってなぐあいで滅茶苦茶時間の掛かるはずの「変身」を遊園地のトイレででもすばやくできたりするのには、やっぱ、コミック原作なんだなぁと実感させられました。取り敢えず、面白いです。しかし、一番のお気に入りは主人公ではなくて、デスレコーズ社長の松雪泰子です。「ワタシャ、そんなんじゃ濡れないんだよ!ファ?ック!」とか目をむいて叫ぶシーンが何度も出てきますが、凄いです。何とも形容しがたい凄さです。借金取りに追われていたりはしますが、厳しい先生だった『フラガール』の彼女とは、同一人物とは思えないぐらいの変わりようにみえました。

こんなキャラなのに、やたら深い洞察をします。主人公のメタルバンドボーカリストとしての「才能」を喝破するアタリが凄いですし、現実に主人公は、「僕のやりたかったのは、こんな音楽じゃない」などと口では言っていますが、ガンガン曲(歌詞)をかけますし、ひとたびスイッチ(松雪泰子が投げつける火のついたタバコであることが多いのですが)が入ると、すぐなりきりモード全開になるなど、「才能」と言うレベルを超えているぐらいに見えます。

だから、松雪泰子演じる社長が喝破したとおり、「才能の発揮」としてヨハネ・クラウザーII世になりきることにして欲しかったのですが、主人公はエンディングでも、「夢をファンのみんなに与えるため」にヨハネ・クラウザーII世役を続けると言う、煮え切らない感じの決断でした。ちょいと嫌な感じです。それでも、松雪泰子の切れまくり社長と、ライブシーン、そして、幾つか出演作があるはずなのに見たことのなかったジーン・シモンズの映画出演…。これをキープすると考えたら、DVDは買いだと思いました。サントラも興味があるのですが、フレンチ・ポップス系の曲も入っているのだろうなと躊躇しています。