555 インビジブル・レイン

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経営コラム SOLID AS FAITH 第555号
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 ご愛読ありがとうございます。第555話をお届けします。

 三月に入りました。漸く春が感じられるようになりました。年度替わりの
変化を経験する方も多いことでしょう。また年度替わり故に、倒産や廃業も
増えるはずです。グローバル経済からブロック経済へ大分振り子が戻ってし
まって、読めない世界が広がってしまったと嘆息する声があちこちから聞こ
えてきますが、こんな時こそ、短中期視点で経営を推し進める中小零細企業
の機動性が活かされる場面だと思われます。

 ブロック経済が進めば、日本国中に各種の内製化の波が押し寄せ、特に地
方の中小零細企業やその地域の経済には朗報がもたらされることでしょう。
既に人口を大幅に失い、破綻寸前の市町村でなければ、何とか盛り返す絶好
のチャンスの到来かもしれません。そこに住みたいと思える制度や環境、そ
して人間関係、そして総合的な教育制度などが用意できれば、人口も経済も
ジワリと上向くものと考えられます。

 前回の『無機的変異』はどんどん廃れていく生産現場の小集団活動をモチ
ーフに人による現場改善を考えてみたものでした。今号は『インビジブル・
レイン』と題して、接客や販売の現場での人の質やオペレーションの質の維
持管理の難しさを考えてみます。

 タイトルは敢えて「・」を挿入しましたが、女性刑事と暴力団幹部の禁断
の愛を描いた『ストロベリーナイト』の劇場版から取りました。映画と本コ
ラムの内容には全く関連がありません。残念ながら今は亡き主演女優の追悼
文でもありません。二階からは見えない霧雨と、意識野に上がって来にくい
人間ならではサービスの価値、そして、長く維持することが難しい個性ある
サービス…。このようなイメージから、つけたタイトルです。いつもに比べ
ても尚、論点が明確に描かれておりませんが、情景描写を味わっていただけ
れば幸いです。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想など
へのお返事の目標納期は5営業日!!

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その555:インビジブル・レイン

「サンフランシスコのとある応接間には、バリスタロボットが登場した。そ
の名も『ゴードン』。メールで注文をすることができ、ロボット自体も全国
各地に設置可能である。私も一度試してみたことがあるが、とてもおいしい
アメリカンを作ってもらえた上、スターバックスよりも40%ほど安く済んだ。
ゴードンは、より効率的に、より安く、そして人間のバリスタと同じくらい
の、いや、場合によっては人間以上の品質の商品を提供してくれるのである。
(中略)ゴードンのデビュー後、スターバックスは、同社で働く15万人のバ
リスタを機械と取り換えるつもりは当面ないというコメントを公表せざるを
えなかった」。
 先端技術によって米国の雇用が急激に減少している窮状に対して、ベーシ
ック・インカムの導入を説く『普通の人々の戦い』の前段に登場するエピソ
ード。
 
 職場でもなければ家でもない「第三の場所」を利用者に提供するのが私達
の仕事。スタバはただのコーヒー屋ではないと彼らは言う。くつろげる「第
三の場所」は調度品から取扱品目まですべてによって構成されている。バリ
スタはその中に含まれているのか。「当面」という言葉にスタバの苦悩が滲
み出る。ゴードンもどきが配置されるなら、レジだってセルフになる日は近
い。その時、店内はまるでドリンクバーのあるファミレスの様になって、マ
ン喫、ネットカフェ、映画館にゲーセン、図書館に個室ビデオ店、日本には
溢れ返る「第三の場所」提供業の競合他社がそんなスタバを包囲することに
なるだろう。
 
 嘗て横浜の商業施設の運営会社がクライアントだった時、その施設の中に
スタバが開店することとなった。見学させてもらった新任スタッフ達の研修
は長い時間をかけ入念に行われていた。バリスタのみならずスタッフまで、
ゴードンもどきやセルフレジに置き換われば、研修コストもだいぶ浮くので
はないか。
 
 私がよく行くスタバの店舗では、スタッフが明らかに私を個別に認識して
いる。霧雨が降り始めた或る日の午後、カウンターに石窯フィローネを載せ
てアイスラテを注文し会計の用意をしていると、自他ともに認める「アニメ
の猫娘」似のいつものスタッフが「ここは二階だから、傘をさしている人も
見えなくて。雨が降ってきているんですか」と尋ねた。 私がちょっとねと
答えるが早いか、猫娘は「雨雲レーダーは見ましたか」と畳みかける。
 
「いや。雨雲レーダーで微妙な雲がかかっていても、降ったり降らなかった
りするし、よく分からないよね。予想が外れるのは、雨雲レーダーも人間の
天気予報の番組もおんなじことのように感じるから、台風とかでもなければ、
朝の天気予報を見てお終いでいいかなと思って。かわいい華也ちゃんが『傘
をもってけ』っていうから、傘持ってきたし」。
 その人気お天気キャスターの阿部華也子も卒業し、猫娘も産休に入って見
なくなった。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『世界のニュースを日本人は何も知らない』
■『世界のニュースを日本人は何も知らない 2』
■『世界のニュースを日本人は何も知らない 3』 三作 谷本真由美 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第556話 『甦りの場所』 (3月25日発行) 
 少年院で行なわれている数学教育の話を読んで考えた「学びの重要性」に
ついてまとめてみました。

(完)