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経営コラム SOLID AS FAITH 第159号
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ご愛読ありがとうございます。第159話をお届けします。
当コラムの7周年記念特別号の発行まで、2ヶ月を切りました。寄稿をお願
いしたすべての方からご快諾を得て、10月末日発行に向け、鋭意準備を進めて
おります。6周年記念号が、相互広告依頼のお断り方法や読者数逓減など、当
コラムの運用についての話題が中心だったので、今回はそれ以外の項目で構成
できるよう考えております。ご期待下さい。
今回から連載の方は、創刊以来始めての4回連続のシリーズが始まります。
シリーズのタイトルは『愉悦のフライト』で、千歳・羽田間の移動の際に見聞
きしたことなどを元にまとめた文章が4回連続で続きます。このシリーズが終
了すると、ちょうど7周年記念号の発行ということで、シリーズの4回の収ま
りもよく配置することとなりました。
第一回目の今回は、『人形の夢』と題して、日常生活の中で持てるはずのマ
ーケティングの視点に関して考えてみます。ご一緒に日々の生活を見直してみ
て戴けましたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その159:人形の夢 =愉悦のフライト(1)=
キャスター付きの大きな旅行鞄を頭上のビンに詰め、座席に身を沈め、読み
かけの本をまた開いた。米澤泉氏の『電車の中で化粧する女たち』。「電車内
化粧」を携帯電話の通話並みの迷惑行為として扱うことに異を唱えることから
始まるこの本は、化粧が多くの女性にとって、身嗜みではなく耽溺する趣味、
さらにそれが高じて心の支えであると主張する。
サブタイトルは『コスメフリークという「オタク」』。生身の女性に関心を
持たなくなった男性の関心は二次元の女性とフィギュアの女性に向かう。一方、
女性の方は、自分自身をフィギュア化することに余念がなくなったのだという。
なるほど、著者が指摘する通り、外見上は全く似ていなくても、オタクとコス
メフリークの消費行動は似ている。記号的意味を読み取れるようになる「読む」。
そして自分でも実践できるようになる「書く」。そして、その価値観を周囲と
交換する「語る」。コスメフリーク達の「化粧行動」は、各種日本文化の嗜み
や、高じた趣味の形に確かに酷似している。
『電波男』で、著者の本田透氏は、野村総研が算出したオタク関連市場の規模、
2900億円を8000億円に及ぶものと再定義する。化粧品市場の拡大は、ズラリと
コンビニに並ぶ化粧情報誌の種類で十分に体感できる。「消費者はなぜモノを
買うのか」と言う単純な問いの答えは、年を追ってどんどん変わってゆく。オ
タクとコスメフリークを比較するだけでも、それが、特別な商品分野に限らな
いと分かる。日下公人氏の『21世紀、世界は日本化する』を読むと、単に特定
の地域にも限らない。
コスメフリーク達の究極の夢は、「少女マンガの主人公の目」、「毛穴のな
い肌」、「汗をかかない脇の下」、「永久に毛の生えてこない手足」に象徴さ
れる「生き物的なもの、動物的なものを排除したカラダ」と言うくだりを読ん
でいると、キャビン・アテンダントが飲物を乗客に配っている。紙コップを差
し出す腕には確かに毛も毛穴も見えない。毛布を配る腕にも、機内販売品を掲
げる腕にも、新聞を薦める腕にも、毛穴は認められない。時は四月。周囲の席
には、研修に向かうと思しき若い女性社員の一団が居る。皆、顔色は抜けるよ
うに白く、目は大きい。
毎週、飛行機に乗っている。化粧をした女性は毎日目にする。電車で化粧す
る女性を見かける頻度も間違いなく上がった。マーケティングの4Pは教えら
れるし、シーン・マーケティングは卒論のテーマだった。エクスペリエンス・
マーケティングについては調査レポートをクライアントに提出した。それでも
マーケティングが分かっていない。時々刻々と眼前で移ろって行く消費の舞台
裏に、本を読んで初めて気付かされるのだから。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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次号予告:
第160号 『高確率の退屈』
シリーズ『愉悦のフライト』(2)(9月25日発行)
シリーズの第二回目は、機材故障や遅れが続発する航空機に関して考えてみ
ました。巨大な仕組みの維持管理の難しさについて自分なりにまとめてみたも
のです。ご期待下さい。(完)