150 勝者の決め技

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経営コラム SOLID AS FAITH 第150号
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ご愛読ありがとうございます。第150話をお届けします。

早いもので、ゴールデンウィークも間近に迫りました。今年は私も連休が長
めに戴けそうなので、古本の選別、ベータのソフトの処分やDVDへの移し替
え、そして、新たに買った二台のPCを弄ることなど、色々と手を掛けながら
過ごそうと考えております。

さて、今回の号は、コア・コンピタンス、取り分け、中小零細企業から見た
大手企業の強みについて考えてみます。プリキュアから水戸黄門まで、テレビ
ネタ総動員のおかしな号ですが、お楽しみ戴けましたら幸いです。本文に対す
るご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標
納期は5営業日!!
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その150:勝者の決め技

四歳の娘と『ふたりはプリキュア』と続編の『ふたりはプリキュア マック
スハート』と言うテレビ番組を録画編集して見ている。光の園の力を得たヒロ
イン達が、闇の力の僕と呼ばれる輩に、毎週、必殺技で鉄槌を下す。技をわざ
わざ宣言するが、決めのポーズと共に、かなり気合いを入れて叫ぶので、まね
しようにも、何と言っているのか分からない。そこで、絵本を買い求め、「エ
キストリーム・ルミナリオ」だの、「マーブル・スクリュー・マックス・スパ
ーク」だの判読して、娘に練習させる。

松村劭氏の『勝つための状況判断学』を読むと、戦場でも軍隊毎に決め技が
あることが分かる。「戦闘ドクトリン」と呼ばれる決め技が、アレキサンダー
大王の戦闘陣形「マケドニアン・ファランクス」を事例として説明され、大王
は歴戦を例外なくこの戦闘ドクトリンで勝利したとある。戦術とは戦闘ドクト
リンを繰り出せる様に戦況に適合させる策であって、決め技とは異なると説明
される。たった一つの決め技で勝ち続けられるからには、「千変万化」と説明
される戦術に大王は優れていたのであろう。

確かに、相撲取りも将棋指しも、勝てば勝つほど、得意技に磨きが掛かり、
勝ちパターンは多様に、しかし、決め技は絞られてくる様に見える。競合が熾
烈であればあるほど、勝つことの重みは増し、確実に勝てる手で勝とうとする
のが道理であろう。

大手企業のコア・コンピタンスの説明を経営書で読むと、強みの多くは、モ
ノ、カネ、設備、情報システムなどの経営資源に依拠している。資金は使えば
いつか枯渇し、商品は安く模倣され、新たな商品に凌駕される。設備も情報シ
ステムも、柔軟な対応を阻む。特許はいつかリバースエンジニアリングで迂回
され、情報は簡単にコピーされる。組織がそのコア・コンピタンスに漫然と依
存するなら、至る所で決め技は使い回され、敵の目に晒され、破られ易くなる
ことだろう。コア・コンピタンスは随分と心許無いもののようだ。

「大手と競合してもスピードと登録者の数で負けるから、大手人材会社の来な
いような中規模クラスのクライアントを開拓したのに、最近はそこにまで大手
が食いこんで来るんだよなぁ」と中小人材派遣会社の幹部が嘆く。

「さんざん、使い古された必殺技なんて、破り方、バリバリに分かるんじゃな
いんですか。この前、テレビを見ていたら、新バージョンの水戸黄門をやって
いたんですよ。最近は、江戸の老中が黄門様をよく思っていないようで、黄門
様が訪ねる先の悪代官に、『ご老公が印篭を出す前に、ただの隠居爺として謀
殺せよ』とか指示していましたよ。タネさえ分かっちゃえば、幾らでも破れま
すよね。出すだけでナンボの磨きも掛かっていないような必殺技なんてそんな
もんですよ」。私は真顔で応えた。
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次号予告: 第151号 『閉鎖社会』 (5月10日発行)
最近、大手企業でよく聞くCSRについて考えてみました。オープンシステ
ムとしての企業、社会の一部としての企業の役割などを考えます。ご期待下さ
い。(完)