『コンフィデンスマンJP』

 5月中旬から封切られているのですが、人気作品にしては6月下旬にして既に大分息切れ状態になって来て、新宿では3館で上映しているものの、どこも1日1、2回の上映になっていたので、危険を感じて慌てて観に行くことにしました。6月の最後の水曜日の晩、22時20分からのバルト9の上映です。動員に敏いはずのバルト9は1日2回の上映ですが、他の2館、ピカデリーは1日2回、ゴジラ生首ビルの映画館は1日1回の状態で非常に珍しい状況と感じます。

 私がこの映画を観たい理由は偏に長澤まさみ狙いです。2017年ぐらいから、『銀魂』シリーズ二作、『マスカレード・ホテル』、『キングダム』 、『コンフィデンスマンJP』など、それなりのヒット作に連続で出演していて、絶え間なくそれらの映画のメディア露出に登場する感じになっています。私がここ最近長澤まさみを意識するようになったのは、劇場で観た『散歩する侵略者』がきっかけです。芸達者な役者さんで、もういい歳なのですから、エロスのある役柄ができて当然ではあるのですが、この作品では、まさに異星人に地球征服を思い留まらせるほどの満ち溢れる愛情を迸らせる、おまけにその愛情をその微妙な身体表現から表現するという難役を易々とこなしています。

 続いて『嘘を愛する女』です。こちらはこちらで多分今までで最大級の長澤まさみのエロスの世界と言った感じになっています。もちろん、後半はロードムービー風になったりと、別にストーリー自体がエロに偏っているわけではないのですが、長澤まさみにセックスを連想させる発言をさせたりするところまで迫っていたりします。このブログにも「エロさ、可愛らしさ、そして、バリキャリウーマンの溌剌さ、そんなこんながこんなに綺麗に組み合わされて、照度高く照らされた長澤まさみの中に凝縮されている見所多い作品です」と書いている通りです。パンフレットはまるで長澤まさみの写真集であるかのように、彼女のアップの写真で溢れています。

 その後、私が見る気が取り敢えず湧いていない中国映画の『太平輪』でも、かなりエロティックなシーンがあると言われていますが、私の知る限り、愛に嵌まり込んでいく女性を演じた長澤まさみを観るなら、『散歩する侵略者』と『嘘を愛する女』が最高だと思います。DVDで観た『50回目のファーストキス』など全然目ではありません。

 その長澤まさみが、ありとあらゆる立場の女性に扮して見せるTVドラマがあるとかなり前に噂で聞いていたのが『コンフィデンスマンJP』でした。上に書いたように、長澤まさみのエロティックな面を書き連ねてきましたが、それが注目に値するのは、彼女の多くの役がそうではないからです。長澤まさみは基本的にそのような方向性に意図的にキャラを傾けなくては、エロティックに見えることがない女優だと思っています。

『嘘を愛する女』の記事でも「その話を私から聞いた娘が教えてくれた「アンダーアーマー」のCMでフラッシュダンスの代表的なダンスシーンをより獰猛にしたような振りで銭湯で踊り狂う長澤まさみの方が、余程強く印象に残ります。ただ、その姿はスポーツ系のビキニショーツと言った出で立ちで、明らかに体のラインがばっちり出ていますし、足を大きく広げたり、所謂悩殺ポーズも取るのですが、どうも今一つエロさがないのが、本当に不思議な女優さんです」と書いた通りで、遠景で撮ると、骨太の体型でどしどしと言った感じで歩いているように見えて、どうも色気がありません。その意味では、噂に聞いた『コンフィデンスマンJP』やここ最近観た『銀魂』シリーズ、そしてまだ観ていない『キングダム』などは、そのような彼女の「演技力の高さ」をガッツリ生かした作品と見ることができるのだろうと思っていました。

 完全に終電時間枠にかかっている時間帯のシアターに入ると、平日なのに、40人ぐらいは観客がいました。大多数が20代から30代ぐらいで単独客が少ない感じで、同性もいれば異性もいる感じの二人連れが多いように感じられました。男女比もほぼ半々のようで、僅かにいる男性単独客が(私も含めて)それなりに高齢であるケースがあったように記憶します。

 DVDの映画はネットの宅配レンタルで見ることにしていますが、『コンフィデンスマンJP』のテレビ版は、映画の人気なのかずっと貸し出されていて、私のレンタルカートに登録はされていますが、いつまでも借りられないままに、映画鑑賞を迎えています。ですので、「コンフィデンスマン」というのが詐欺師のような商売であるということぐらいしか、全く予備知識なく観に行くこととなりました。前評判では、「テレビシリーズを観ていなくても十分楽しめる」という話だったので、あまり不安もなく、「まあ、『戦隊モノ』でよくある女性隊員の各種コスプレが見られる回のような感じで、長澤まさみの変装姿シリーズを楽しめれば取り敢えずマル」ぐらいの気楽さでした。

 観てみた感想で言うと、詐欺師の話自体は、何かテレビ番組の尺やクオリティの域を出ていないように感じられて、面白くない訳ではありませんが、観入ってしまうようなレベルには感じられませんでした。たとえば、集団で詐欺を働く話で邦画なら『カラスの親指』が私は好きですし、洋画なら『グランド・イリュージョン』シリーズ二作や『フォーカス』なども好きです。『カラスの親指』は詐欺の規模そのものは少々地味ではありましたが、人情ドラマに仕上がっていて良かったと思いますし、洋画の三作の方は規模が大きくド派手で、おまけに詐欺師集団のメンツのキャラがそれなりにちゃんと立っています。(今回の『コンフィデンスマンJP』の競馬場のプレミアム・シートの状況が『フォーカス』の中の場面とかなり酷似しています。)

 それに比べると、『コンフィデンスマンJP』は、何か捻りが少ないように感じられます。それが何かそこはかとなく感じられるTV番組テイストであるように感じられるのです。『コンフィデンスマンJP』も、香港を舞台に大騒ぎになっていますから、後述するような見所はたくさんあるのですが、騙しのカラクリが、基本的に時系列的に前から仕込んで大舞台をカネにモノを言わせて作った方が勝ちという、比較的単純な「早く動き出して大金を負担できる人間が勝つ」構造なので単純すぎるように見えるのだと思います。

 それでも、個人的な見所は結構ありました。元々狙っていた長澤まさみ七変化は、香港到着直後のブルース・リー風トラックスーツ、シャーマン型の占い師、看護師などなど、各種堪能できます。パンフレットでテレビシリーズの長澤まさみのなりきり役柄の一覧もありましたので、やはり、テレビシリーズも見なくてはと心に決めました。

 英語以外のそれなりに本格的に勉強した経験があるのは、広東語で今でも少々聞いて分かり、さらに少々話すこともできるぐらいの知識がありますが、それもこれも、30歳少々前に香港に4ヶ月滞在していたからです。建物はどんどん変わっていくのが香港ですが、やはり、見覚えのある街が楽しく感じられました。

 また、コンフィデンスマン一味となっている竹内結子の存在も非常に大きかったように思います。終盤近くでぶっちゃけた竹内結子のコンフィデンスマンの本性と、それまでのなりきりの状態のギャップが大きく笑わせてくれます。芸歴の割に映画出演作品が多くない女優で、私は『リング』第一の被害者として最初に認識して、その後『黄泉がえり』でかなり気に入りました。映画そのものも石田ゆり子や柴咲コウ、哀川翔などの好演でかなり好きです。(他の記事にも書きましたが、実はその『黄泉がえり』に長澤まさみが出演していたことをかなり後になってから知りました。)

 その後、マイナーながら彼女の主演作で愉しめたのはDVDで観た『サイドカーに犬』と『ストロベリーナイト』シリーズぐらいで、後は端役で「あ。ここにもいた!」と見つけた『殿、利息でござる!』ぐらいです。ちなみに『殿、利息でござる!』では飲み屋の女将の役ですが、主役級の人々がその店で「オカミにカネを貸そう。そして利息で儲けるのでござる」のようなことを言うと、横で聞いていた竹内結子が「いやぁだ。私はカネなんて要りませんよ」とオカミ違いの発言をするのが、なぜかやたらに笑えます。コケティッシュ系の顔にとても好感が持てますが、なかなか見かけない人なので、スクリーンで観られたのは非常に良かったです。

 後は、『電人ザボーガー』のイカれた巨大女子高生ロボの役から、見ていてかなり楽しめるようになった佐津川愛美もそれなりに活躍してくれています。捻りはイマイチでしたが、これから観ようかと思っていたテレビシリーズをより楽しみにしてくれましたし、個人的な見所はたっぷりでしたので、DVDは買いです。

追記:
 香港に舞台を移してかなり早い段階で、不自然なアイパッチをした老女が道路で掃き掃除をしている姿が画面に登場します。「これが、その姿を現さない金持ちのバーさんってことか」と思っていたのに竹内結子が出てきて、「ん?」とずっと思っていたのですが、結局、私の読みが正しかったことが後で分かりました。登場シーンが目立ち過ぎであるように思えました。

追記2:
 小栗旬がエンドロールで出ていて、どこに出ていたのかとネットで調べてみたら、そう思った人は多かったようで、宝石の贋作を作る職人でした。