101 虚弱と悪手

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経営コラム SOLID AS FAITH 第101号
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ご愛読ありがとうございます。第101号をお届け致します。

とうとう、100話を前回で達成致しまして、今回からまた、通常号に戻って
当コラムを再開致します。100号発行にあたっては、多数の方から御祝いの言
葉を頂きました。中には、「偉業」と称えて下さった方や、「次ぎは1000号を
目指して」などと言う途方もないコメントを下さった方もいらっしゃいます。
1000号はかなり無理がありそうですが、ご愛読下さっている御気持ちからの御
言葉に、心より御礼申し上げます。

今号は、引退が迫った経営者の「会社を成長させる機会をどこで逸し、なぜ、
できの悪い会社になったか」と言う問いを受けて、考えたことをまとめたもの
です。文章を読み返し、予告でお伝えしたタイトルを僅かに変更致しました。
内容も多少捻りのある展開にしてみましたので、お楽しみ頂けましたら幸いで
す。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目
標納期は5営業日!!
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その101:虚弱と悪手

「ソニーだって、ホンダだって、キヤノンだって、最初は小さな小さな会社だ
った訳だろ。ウチだって社歴の年数ばかりは長いのに、どこを間違うとこんな
に出来が変わっちまうんだろうなあ、市川よ」。
知り合いの社長が問いかけて来て、社交辞令で私は答える。「社長の言う
“出来”を何で計るかって言う問題もあるんじゃないんですか」。
「おまえ、本心から、そんなこと思ってんの」と執拗な社長に、私は「ええ」
と真顔で答えた。

与信調査機関のベテランだったコンサルタントによると、創業から数年の期
間を除いて、会社の良し悪しは人間の体質のようなものであると言う。「生活
習慣」などが悪い者は、何かの指標や切口に、凋落しがちな兆候が現れ、それ
を放置すると遅かれ早かれ、何かをきっかけに倒産に至ると言う。この説明を
採用すると、「出来の悪い会社」は、虚弱体質だったり、何かの異常を抱えた
ままで改善しきらないまま、のた打ち回りながら生き延びて来たことになる。

碁や将棋に経営を例えるコンサルタントも知っている。序盤で悪手を打つと、
その回復に幾つもの手を余計に打たなければならない。その余計を見過ごして
くれるほどのアマチャンが相手なら勝つこともできるが、そうでなければ、悪
手一手を取り戻すための数手が重い足枷となって敗北につながるということな
のであろう。こちらの比喩を採用すると、「出来の悪い会社」は悪手一手を
打ってはそれの回復を図り、再び悪手を打ってはその回復を図ると言う状況な
のであろうか。

「出来の悪い会社」について尋ねる人に、「体質説」や「囲碁将棋説」を解説
すると、少なくとも「なるほど」と頷いて頂ける。しかし、それが私をよく知
る人であっても、解説を聞いた時に、私が病弱で、お世辞にも生活習慣が良い
とは言えないような者であることを思い出さない。それが私をよく知る人で
あっても、私が「もっと必死に働けば、今の5倍や10倍はすぐに稼げるのに」
と月に一度は周囲から言われていることを思い出さない。

経営理念が会社の隅々にまで行き渡っている企業は良い企業だそうである。
それであれば、売上が倍増することもなければ、社員もいない、事務所も無け
れば、パンフレット一つ無い、それでも弊社は世界トップレベルの会社である。
病弱で怠惰でも、頑迷な私が一人きりの会社である限り、経営理念は完全に
隅々に行き渡っているのだから。
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次号予告: 第102号 開放的認識(4月25日発行)
先日、営業担当者の研修で顧客満足について話したことがあります。その際
に、顧客満足が意識されることの多い小売業での事例を用いたところ、ピンと
来ない、または、自分には関係のない事例と感じた参加者が多かった様です。
その際に考えたことを簡単にまとめてみました。(完)