＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
経営コラム SOLID AS FAITH 第76号
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
ご愛読ありがとうございます。第76話をお届け致します。
またぞろ戦争が始まりました。国連決議に反しているだの、いないだの。一
国の利益を優先した同義なき戦争であるだの、ないだの。テレビではそんな話
ばかりが流れています。私が参加しているメーリングリストでも、ピースウォ
ークへの呼びかけが頻出するようになり、道路を歩いていても、反戦の署名を
求められるようになりました。
無用な血が流れ、尊い命が多数奪われるのは遺憾であり、そのようなことは
無いに越したことはありません。しかし、歴史上殆どの戦争は、統治者とそれ
を支える資本家の利益のために発生したもので、欲のブレーキの甘い人物が上
に立つ可能性がある限り、このような戦争は起きるのが当り前と私には思えま
す。
そこで今回の号は予告通り、（戦争系のタイトルにはなっていても）マーケ
ットシェアについて考えた通常号『果てしなき戦地』と、時節柄の特別原稿
『油売りに学ぶ経営』を、多少長くなりますがお届けすることとしました。お
楽しみ戴けましたら幸いです。ご意見・ご感想お待ちしております。お返事は
必ず送信致します。（お返事の納期は５営業日!!）
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
その76：果てしない戦地
外資系の写真フィルムメーカーでマーケティング担当者をしていた頃、毎年
一度、電卓を片手に憂鬱になる作業があった。それは、業界誌の編集部からの
一通の封書で始まり、資料を漁る数日間の奔走が続く、マーケットシェアの調
査である。
カラーとモノクロ。35ミリとブローニー。ネガとリバーサル。さらにＩＳＯ
感度や撮影枚数。その上にレンズ付フィルムやＡＰＳが組合せを徒に増やして
ゆくので、総アイテム数は膨大なものになる。それでも、製造元は全世界で十
指に満たないので、エクセルの串刺し計算でアイテム別の全体市場規模と各社
のシェアは比較的明解に算出される。退職してから６年近く経た今も同じ作業
が反復されているのか知らない。デジカメの普及の様を見るつけ、アイテムの
どれともなく市場全体が萎み、沈み込んでいるのが見て取れる、そんな冷たい
数字になっているのではないかと想像する。
中小企業診断士になった当初、縁あって、ある熊牧場の幹部のお話を伺う機
会を得た。収益が毎年逓減し、日常のオペレーションにおいてありとあらゆる
改善策を試みても、回復の兆しが見えないとのことだった。「客足が遠のいてい
るんです」とその人は沈み込む。全国に熊牧場は片手に余るほどしかないと言
う。業界団体に代わる連絡会もあるらしい。シェア調査を実施すればフィルム
会社以上に簡単だろうが、多分、業績悪化の犯人探しには貢献しないだろう。
経済紙を読んでいると、面白い記述に目が止まった。今なお時代の最先端と
言うネット上のＢ２Ｃの解説で、「次々と競合相手が現れるので、赤字を覚悟
で競合店から顧客を奪うような従来型のマーケティング手法は通用し難い」と
ある。同様の他の記事では、「ネット上ではシェアと言う概念が成立し難い」
などの表現もある。
シェア、市場占有率。それを算出するためには、母数である市場規模を決め
ねばならない。市場を知るためにはその登場人物の一覧と各々の売上額が必要
になる。ＣＤの売上やカラオケボックスの売上が、携帯電話の普及で落ち込ん
だと言う。一丁先のライバル店から大型店へ、そして、数キロ離れた商業集積
のあるターミナル駅へと仮想敵国を移し、疲弊して閉店したと言う小売店を知
っている。ネット上に限らず、現実の商売でも、もともと占有できる市場の存
在さえ怪しいのではないかと、今は亡き恩師、小谷喜八郎先生による店舗差別
化の記事を読み返して思い至る。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと一層楽しめます。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
特別原稿： 油売りに学ぶ経営
ある日、オヨネ油販売株式会社の社長は、ＭＢＡを持つ専務を呼んでこう話
す。
「これから事業が大きく伸びそうと言う時に、例の大口仕入先のオムスリ社グ
ループは全く非協力的だな。それで考えたんだが、いっそのこと、あのグルー
プの中核のオイラク社をＭ＆Ａしてしまおうと思う。そして、こちらの意向を
反映するような経営者を送り込んでしまえば全て解決だ。こちらの資金はタッ
プリあるから、あんな奴らの提示額に載せられて、あいつらの懐に入れるぐら
いだったら、いっそＴＯＢだ。オアフガ社に続いてもう一社行くぞ」
すると、専務は眉を顰めて応える。
「しかし、ウチと談合仲間のオツユ社とオブツ社は既にオイラク社と業務提携
の形を取っています。ＴＯＢなんかかけようものなら、あの二社が業界団体を
動かして、猛反発することでしょう。理事会で色々言われて、下手をすると干
されてしまいます。また、ウチの社内だって、そこまで荒立てるやり方には反
発が出る可能性があります。危ない橋ではないでしょうか」
社長はもう決断している様子で説明する。
「業界団体の物言いなど、「真剣に考慮している」とか言ってかわせば良い。オ
ツユとオブツだって、今の段階で上手い汁を吸ってきたんだ。ＴＯＢ資金の協
力でもしたら、オイラクがウチのものになっても、多少は面倒見てやるさ。問
題は社内だな。後は株主や顧客の評判も問題だ。ＴＯＢを宣言しただけで、五
月蝿い奴が出て来そうだものな。そうだ、オイラク社が不当に利益を出そうと
値を吊り上げているので、経営改善するために買収したと宣伝しよう。ＩＲ・
ＰＲはその線で行け。あと重要顧客には、真面目にＣＲをやっておくか。先方
の社長宛に書面で同じネタを書いて、後で私が行くことにしておけ。面と向か
って、向うにも損の無い話だと言えばそれで済む。あと、業界団体でも少しは
風当たりを減らすのに、零細の同業者に声をかけておけ。オニッポ社なんかは
尻尾を振って来るんじゃないか」
その頃、オヨネ油販売の入っているビルの別のフロアでは、グループ会社の
オヨネ重機販売株式会社の社長が窓の外を見ながら呟く。
「この前の知事はスケベの癖に、儲けることには生真面目と来て、全然売りが
立たなかった。今度の知事は公共事業が好きみたいだから、一気に回復しなく
ては。オムスリのある地域なんかは荒れているから工事が始まったら、大儲け
だろうがな。今はそんな話はないか。知事に選挙の時の恩をまた思い出させて
やるか。そうだ、グループ内経営者会議で、油販売の社長もオイラクが狙いだ
と言っていた。グループで協力してあの辺りを商売のネタにするか」…
仕入先に対するバーティカルインテグレーション。ＴＯＢ、ＩＲ、ＰＲ、Ｃ
Ｒ。業界におけるアライアンス。そして、グループ企業経営におけるシナジー
効果やガバナンス。さらに、存在しないニーズを創造する現代型マーケティン
グ。最近テレビでも見るこのケーススタディは大変参考になる。そして、後付
けの企業理念はどこまで有効かをこのケースから学んでみたい。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
☆生まれ来る我が子も見ることなくガタルカナルで戦死した祖父のように、意
図せぬ場所で独り逝く方々のご冥福を心より祈念申し上げます。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
＜ＭＳＩグループの近況＞
◎ ラジオ番組制作続報!!
『市川正人の知らなきゃアブナイ 仕事選びの常識・非常識』
ＦＭ岡崎にて４月５日夜８時３０分より放送開始！
（毎週土曜日２０：３０?２１：００）
＜ 番組収録ＭＤは全３枚！ ＞
１枚に４話ずつ収録。１話収録部分約15分で１枚１時間。
１枚1500円（消費税別）。セットのお買い上げで、二枚分のお値段。
※ ＣＤ録音も検討中…。
お買い求めのご予約は
スポンサーのリーガルシューズ岡崎店のホームページ
http://www002.upp.so-net.ne.jp/regalokazaki/ にて。
ラジオ番組特別テキスト
『もう一度考え直す 就職・転職活動 成功への10大鉄則』
の申し込みも上記のＵＲＬからどうぞ。
ＭＳＩグループの“就労観教育”の内容に関してはこちらで
http://member.nifty.ne.jp/MSI-GRP/MSI-lec-index.html
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
発行：
「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社ＭＳＩグループ（代表 市川正人）
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
msi-group1@mbb.nifty.ne.jp
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行！ 盆暮れ・年始、一切休まず、４年目に突入!!
マガジンＩＤ：0000019921全バックナンバーはまぐまぐのサイトで
掲示されております。
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000019921
講読の登録・解除はこちらのＵＲＬでお願いします。
http://member.nifty.ne.jp/MSI-GRP/SAF-index.html
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
※ ご注意!! サーバーエラーなどで読者登録が解除されてしまった方が多数
いらっしゃる様子です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しており
ます。届かなかった際には、弊社ホームページで発行状況をご確認の上、再登
録をして下さい。
http://member.nifty.ne.jp/MSI-GRP/SAF-index.html
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
次号予告： 第77号 安寧の選択（４月10日発行）
あまり知られていない映画を見に行って来ました。その時に考えた差別化に
ついて再びまとめてみました。ご期待下さい。