065 桜の記憶 =価値の媒体=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第65号
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ご愛読ありがとうございます。第65号をお届けします。

今号は次号に続き、『価値の媒体』シリーズと題してお送りする第2弾です。
今回も「商品の付加価値」をも含む一般的な「価値」と言うものが、人から人
へとその記憶を経て伝えられて行くことに着目してみました。前回とは多少異
なり、奇を衒って記憶に残す手法の紹介ではなく、価値観や考え方を伝える方
法を模索してみます。お楽しみ下さい。

さて、ふと、気づいてみると、今年も10月が迫って参りました。1999年の10
月に創刊したこのメールマガジンも、とうとう65号に至り、増刊号を6号も出
し、何とか3年も続けてきたことになります。読者の方からのご支持の賜物と
思っております。

そこで、昨年、一昨年と発行した「○周年記念特別号」の発行となりますが、
恥ずかしながらすっかり失念しておりました。慌てて、企画を練っております。
そこで、もし、ご希望のネタ・企画がございましたら、是非メールにてご一報
下さい。余程、手間のかかるものでない限り、ご希望に沿えることと思います。
詳細は巻末近くの案内をご覧下さい。

また、今号へのご感想・ご意見もお待ちしております。
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その65:桜の記憶 =価値の媒体(2)=

誕生した娘に妻の希望で「さな」と名づけることとした。「桜七」と書く。

結婚以来住んでいた街の駅が拡張されることとなり、春にはいつも満開に花
を咲かせていた駅舎脇の桜が、「老木で移植に耐えない」との理由で切り倒さ
れることとなった。植物が好きな妻は、その年の誕生日に向かい、陰鬱な日々
を送っていた。知り合いの伝を辿って、植木屋に聞くと、接木や挿し木でも桜
はつきが悪いらしい。「桜切る馬鹿」とは真実らしく、「挿し木なら、玄人が
やっても、1割も持たない」とさえ言われた。妻と違い、自然だの植物だのに
は全く興味がない私が、桜の本を買い、盗み取ったその桜の枝から、挿し木で
増やす研究をした。

低い確率は母集団のサイズで補う他ない。100近くも作った枝の切片の殆ど
は、数日間で死に絶え、ただの木枝と化した。成長の観察記録は、落胆の記録
になった。辛うじて生き残った十本に満たないマッチ棒のような桜が妻へのそ
の年の誕生日のプレゼントとなった。

子供時代、結核や猩紅熱で大量の抗生物質を飲み続け、骨折事故にも数度あ
っている。20歳の頃の入院先で、医師に「このカラダは50か60まで持てば良い
方だな」と言われた。そんなカラダでは、社会と言うラリーに中古車で参加す
るようなものだと言う。現実はその通りだったので、他人が笑い飛ばすあの医
師の言葉も一つの可能性として認識している。

ある漫画の登場人物に、記憶を銃弾の形にして、第三者に打ちこみ伝達する
超能力者がいる。下等動物でもない人間の個体が残せるDNAは受け継ぐ側の
個体数にして、せいぜい一ケタ。ならば、価値観や考え方を遺伝させることの
ほうが人間らしくはないだろうか。

転居の際に、数人の友人に分けてきた桜の幼木の成長した姿を、いつか娘に
尋ね巡らせたい。彼女の名前が問われるたびに、私と妻の生活の断片と価値観
は聞く者の間に時を越えて拡散していくだろう。生への執着の一つの形として、
まるで、銃弾を打ちこむように、第三者に自分の記憶ごと価値観を、刻み、焼
きつけ、刷りこめるなら興奮する。

もしいつか、価値を伝えるための記憶を、記憶に値するエピソードを、銃弾
のように撃ち放てるようになるなら、後継者育成から社員教育まで経営者の抱
える課題の多くは難なく解決することだろう。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと一層楽しめます。
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一昨年に発行した創刊1周年記念号、昨年発行した2周年記念号と、タイミ
ングもルーズになり、内容も読者様の寄稿に依存するようになりと、力を抜く
傾向をそのままに、3周年記念号もやっつけで一気に作り上げたいと思います。
そこで、読者のみなさまから「こんなことを載っけて欲しい」と言う企画やネ
タそのものを大募集致します。

メールにてご一報下さい。 msi-group1@mbb.nifty.ne.jp

※ 通常号や増刊号と異なり、“お祭り号”ですので、くだらないネタでも全
く問題ナシです。ご協力下さい。例えば…
1 「過去1年分に区切らずに、創刊以来のベスト5ぐらいを選んでしまって
はどうか。ちなみに私(投稿者の方)の意見はこれだ!」
2 「過去の原稿を読むと、新聞の勧誘員を追い掛け回したり、近所の犬に吠
えられてキレたり、かなりおかしいのではないか?読者からではなく、
近所や取引先の意見を掲載せよ」
3 「来年も引き受けることになったと言う大学の非常勤講師。“就労観教育”
とは一体何か。そして、セクハラ紙一重の講義内容とは一体何か?」
などなど。(1番のようなネタを著者としては希望致します。)

※ 残念ながら私以外の方のプライバシーに関わる企画提案には応じられませ
んので、悪しからずご了承下さい。
お断り例)「メルマガに登場した『鼻血を出して倒れた社長』、『飼い犬を噛
み殺されたマネージャー』など特徴ある人物を実名で紹介して欲しい」など

締切りは10月11日(金)です。どしどし、ご応募下さい。
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発行:
「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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行しています。(http://www.mag2.com/ ) マガジンID:0000019921全バッ
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次号予告: 第66号 穢きものの写像(10月10日発行)
3Kそのままのような中小企業の職場に、働く価値を見出せる人の要件につい
て考えてみました。ご期待下さい。