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経営コラム SOLID AS FAITH 第62号
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ご愛読ありがとうございます。第62号をお届けします。
盛夏にさしかかり、なぜか、暇になってきました。そこで、巻末のＰＲ欄で
は「それ、本当にひと月の値段なの？一週間でその値段なんじゃないの？」と
頻繁に尋ねられる超デフレ対応型価格体系の弊社サービスの一部をご案内致し
ます。是非、一目ご覧下さい。
今回の号は、中学時代から高校時代にかけて私が読み耽っていた小泉八雲の
ある話を引用しています。初めて読んだ時から釈然としなかったその結末が、
つい先日、霧が晴れるように、閃くように、得心できました。その爽快感を御
共感頂けましたら、望外の喜びです。
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その62：情熱の用途
「見てろ。必ずこの石に食らいついてやる。死して尚、俺の恨みがどれほどの
ものか、必ず見せてやる」などと私なら叫んだだろうと、その場面に想像をめ
ぐらす。
庭先で斬首されるその人は、その主人を呪いながら死に向かう。刑の執行に
あたる者は恐れ戦いたが、当の主人だけが平然としている。そして、恨みの証
しに石に噛り付くようにほだすのだ。果たして、罪人の切り落とされた首はそ
の恨みの証に、石に食らいついた。
しかし、何ヶ月経とうとも、何の祟りも起きない。主人は謎解きをする。罪
人の激しい恨みは、石に噛り付こうと言う一念にすりかえられた。だから、誰
も祟りを受けないのだと。死に行く者の想いが報われないこのような話『かけ
ひき』は、人の思い入れに忠実な小泉八雲の怪談の中では珍しく救いがなく、
そして、釈然としない。
ある会社を訪問している最中に、社長が鼻血を出して倒れこんだ。ティッシ
ュで押さえても、脈打って吹き出て来る。社長は70歳を過ぎている。「良かっ
た。内側にこれだけ吹き出たら、一巻の終わりだった」などと虚勢を張っても、
起き上がることさえできない。
「記憶力も、体力も、あと５年が限界だ。俺みたいな奴を信頼して仕事をくれ
るお客さんがいるのに、会社を投げ出して、潰す訳には絶対に行かない。後継
者を見つけるのか。営業権譲渡をするのか。上手く幕を引けるようになるまで、
死んでも死にきれない」。
この会社は、もう十数年に渡って事業を続けている。お客様からの評判も良
い。社長は情熱を傾けて、仕事にあたってきた。事務所には寝袋があって、い
つでも泊り込みで仕事ができる。とことんやらなくては気がすまない。担当者
がいるのに、自分の手でＨＴＭＬのタグを直したいとまで言い出す。後継者候
補は何人も逃げ出している。
終わりの時は迫り来る。持続不可能な最高の成果を目指し続けて、この会社
は自らの未来を潰してしまったと私は思っている。「石に噛り付いても会社を
潰さないこと」は可能かもしれない。しかし、「石に噛り付くこと」が会社を
経営する目的ではない。
最近、社長の血を吐くような言葉に、思い当たることがある。これが小泉八
雲のあの拍子抜けするような話の教訓ではなかったか。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと一層楽しめます。
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発行：
「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社ＭＳＩグループ（代表 市川正人）
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次号予告： 第63号 身近な漁業（８月25日発行）
近所のスーパーの中とその往復の途上で気づいた、微妙におかしな集客手法
について考えました。共感頂けたら幸いです。