059 よほどのこと

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経営コラム SOLID AS FAITH 第59号
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ご愛読ありがとうございます。第59号をお届けします。

以前、「個性ある社員」(第7話)と題して、人の持つ障害に関して書きま
とめた話を発行したところ、読者の方からの反響が非常に多かったと記憶しま
す。今回の号も昨年、東京で遭遇した耳の不自由なタクシー運転手の話です。
宜しければ、ご意見・ご感想を賜りたいと思っています。お気軽にメールにて
お寄せ下さい。(返事の納期は5営業日!)

販促資料『稼ぐホームページ作りなら、こんな常識捨てなさい。?中小企業
向け、利益を生むホームページ活用術?』は、最終修正を経て、ほぼ完成に近
づきました。4月の上旬までにはお申し込み戴いた方のお手許に届けられるこ
とと思います。もう少々お待ち下さい。申込みは今月末日まで受付けておりま
す。ご希望の方はお早めに本文後の申込み方法の案内をご参照下さい。

また、次号の60号を発行致しましたら、3ヶ月、6回に渡って『月刊フラン
チャイズ』誌において連載中の『こころに効くコラム』の記事を増刊号として
お届けしたいと思います。本文は通常号の2倍半の長さですので読み応え十分
です。詳細は本文後の案内をご覧下さい。
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その59:よほどのこと

「つんぼなの。あのね、ちょっと待って下さいね。今、補聴器入れるから」
タクシーの運転手は、そう言って、もたもたと左耳に補聴器をはめ、車を出
した。行く先を告げたが、どうも聞き取れないらしい。「運転手さん、浜松町
お願いします。は・ま・ま・つ・ちょう!」。やっと通じた。反対の耳も補聴
器が入っていると言う。

「どう行ったもんかなあ」。今度は、ルートに思い悩んでいる。タクシーの運
転手になってから二週間。彼の身の上話が始まった。49歳、ハローワークに登
録して半年、仕事は全く決まらなかった。「未経験者可」でも、年齢が年齢。
おまけに、本人の言葉によると「両耳がつんぼ」で、ハローワークでさえ、推
薦状は書けないと断ったと言う。

「面接まで行けたのが、2社しかないの。この会社が「真剣にやれるんなら、
3週間試しても良い」って言ってくれたの。今、2週間終わったの。何とか、
あと1週間、事故もトラブルもなく終わって欲しいよね」。

彼は自分の給料が幾らか知らない。無線の指示に従うばかりで、勤務時間も
きちんと理解していないらしい。質問できる立場でさえないことを覚悟で、初
めて得た仕事である。

話題の書、「五体不満足」を立ち読みした。障害を持っている子がクラスに
いると、そのクラスは、素晴らしいクラスになることが多いらしい。乙武洋匡
氏とは違い、この運転手は「私が入社すれば、人に優しい組織になりますよ」
と面接で言ってはいないだろう。

性別も、人種も、年齢さえ、面接で問うのは違法で、「差別なき社会」と言
う米国で、管理職の能力試験をすると必ず女性が上位を占めるというデータを
読んだ。男はとんまでも昇進できることの証左らしい。

政府の発案する立法で、この国でも、性別を限定して人材を募ることができ
なくなった。同様に近い将来、「差別」との理由で年齢も提示できなくなるら
しい。「つんぼ不可」と書かれていなくても、「つんぼ」は面接さえ受けられ
ない。「女性不可」と書かれてなくても、女子大生はなかなか行く先が決まら
ない。

「つんぼ」だの「ちんば」だの自称する者のタクシーは、よほどのことがない
限り、快適・愉快に乗れるものではないだろう。「女性の営業担当者では話に
ならない」と考えている取引先を説得して回ってでも、女性を採用する企業は、
あまりないだろう。

私があのタクシーを途中下車しなかった理由。そして、その会社が3週間の
試用を認めた理由。それは、労働条件の一切を聞かずしても、力ずくで「つん
ぼ」のままの人生の可能性を広げた、「よほどの覚悟」ではなかったかと思う。
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「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)

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次号予告: 第60号 夢想と政治(4月10日発行)
世の中で私が関心を持てない天文と政治。その理由を考えることから、出発
した広い意味での経営論です。ご期待下さい。
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今後の発行予定
60号まで発行致しましたら、私が連載をしております『月刊フランチャイズ』
に掲載の『こころに効くコラム』コラムを増刊号として全6回(3ヶ月)に渡
ってお届けします。

増刊第1号 信念の着脱
増刊第2号 天気図の舞台裏
増刊第3号 青い鳥の所在
増刊第4号 癒しのまじない
増刊第5号 功名の対価
増刊第6号 命運の預託

特徴:
⇒文字量は通常号本文部分のほぼ2倍半の3000字弱。
じっくりお楽しみ戴くために、一旦プリントアウトされることをお勧めします。
⇒通常号と違って、時事ネタ多数含有。
連載字の時点の時事ネタですので、多少古くなっていますが、ご容赦下さい。
⇒連載の誌面とは違ったオリジナル独自のモンキリ文体。
誌面でお読みになった方も、編集前の原文を再びお楽しみ戴けます。

長丁場の長文連載ですが、3ヶ月間、たっぷりとお楽しみ下さい。
(あまりに長さに我慢できない方は、登録を解除せずに、お手数ですが3ヶ月
間、増刊号のタイトルを見てすぐに廃棄してください。)